2010年03月21日
ファントム マグサーボ SS-10
今回は日本製のエポックメーキングなリールを紹介。
ダイワのファントム、マグサーボSS-10です。
今でこそ日本製のハイスペックリールが世界を席巻していますが、私がルアー釣りを始めた70年代、日本製リールは性能、デザイン共に欧米製には全くかないませんでした。
70年代後半になってからスピードスプールが発売されて日本製リールの評価が上がって来る訳ですが、スピードスプールは日本で制作はされていましたが基本設計やコンセプトは共同開発したアメリカのルー社が主導したのではないかと思いますので、厳密にはジャパンオリジナルとは言えないと思います。
70年代末、シマノはスピードスプールの機構を継承したバンタムシリーズをリリース、日本国内の釣り具市場へ進出。
低価格で高性能と言う日本工業製品の優秀さで老舗のABUを追従していました。
同じ頃、ダイワは70年代に製造していたABUのコピーリールから脱却。
シマノのベイトキャスティングリールと同様のコンセプトを持つファントムシリーズで対抗しました。
当時のファントムシリーズですが、私的にはABUのコピー品からシマノのコピー品に変わっただけ・・・と言うのが正直な印象でした。
ルアーにしてもリバーラントのイミテーションのコネリーだとか、オークラのコピーのクルセイダーを販売(クルセイダーは今も売っていますが)していたので、他社の後追いをしている二流企業と言うイメージを持たれてしまっても仕方が無かったのではないでしょうか。
関連記事リンク:へドン ミジェットディジット リバーラント スプーク
関連記事リンク:へドン ディープダイブ リバーラント
関連記事リンク:ダイワ クルセイダー
実際、ファントムシリーズの売り上げはあまりパッとしなかったのではないかと思われます。
ダイワの技術者や経営陣は焦っていたでしょうね。
それまでのダイワの販売戦略は、他社と同じ様な物を安く売ると言うスタンスだった訳です。
しかし、シマノが売れていたのは低価格だけでは無く、デザインや機能が他社(ABU)とは違う革新的な商品だったからです。
どうしたら老舗のABUや新鋭のシマノに並び、あるいは抜き去る画期的な商品が造れるのか?
当時、ベイトリールのバックラッシュ対策はメカニカルブレーキと呼ばれる摩擦式の物と、遠心ブレーキと呼ばれる回転抵抗式の2種類を併用するのが一般的でした。
メカニカルブレーキは釣り場でもダイヤル式のネジを締めたり緩めたりして調整可能です。
一方、遠心ブレーキの調整は、リールを分解して遠心ブレーキのブロックを交換しなければなりません。
交換すると言っても、大きさは2~3種類、数は1個か2個で組み合わせるので細かな微調整は出来ません。
しかも、ブロックは大変小さな上に落下し易いので、釣り場でバックラッシュを解消する為にリールを分解していると大抵無くしてしまいます。
殆どの釣り人は一日中同じブロックの組み合わせで遠心ブレーキを使っていた事と思います。
そんな中でダイワの技術陣は、遠心ブレーキに代わる全く新しい機構を考え出した訳です。
電磁誘導ブレーキの登場です。
釣り用のリールとはどう考えても結び付かない誘導起電力をブレーキに使うと言うアイディアが素晴らしいですね。
その時歴史は動いた!とかプロジェクトX!的な当時としては画期的な発明だった訳ですよ。
結果として、ABUもシマノもダイワの真似をして電磁ブレーキを搭載したリールを発売する事になったのですから。
他社の真似をしていた会社から、真似をされる会社になった訳です。
この発明が無かったら、今でもダイワは2流メーカー、あるいは釣りブームの終焉と共に無くなっていたかも知れません。
当時の価格は1万数千円だったでしょうか?
ABUが4万円近い価格だったはずなので当然大ヒット商品になったと思います。
私も販売と同時に購入しました。
マグサーボの発売が82年だったようですが、私がバイクに乗り始めたのが丁度その頃。
バイクのフロントフォークに購入したばかりのカーボンの2ピースロッドを括り付け、マグサーボを持って奥多摩湖に通っていました。
最近はあんまり使っていませんが、今でも現役。
ボディー左のダイヤルが電磁誘導ブレーキの調整装置。
目盛りは10段階、0がブレーキ力が弱く、10は最大。
ルアー重量によって調整するのですが、私はルアー重量に関係無く大体2で使っています。
肝心のブレーキ性能ですが、個人的にはABUの遠心ブレーキと比較してそんなに大きな違いは感じられませんでした。
元々私はサミング重視のキャスティングで、ABUの遠心ブレーキも最弱状態で使い、メカニカルブレーキにもあまり依存しないので違いが実感できなかったと言う事でしょうか。
左サイドプレートは樹脂製。
寒冷期でも冷たくならないと言うのはメリット。
ABUと同様、メカニカルブレーキも装備。
2-BALL BEARINGS。
この頃からベアリング数を表示し始めたんですね。
ボディーシェイプやクラッチを切るとレベルワインドがスプールから切り離される機構はスピードスプールと同様です。
ハンドルは高級感溢れる?ウッドノブが標準ですが、ABUの4500Cに付いていた大型のダブルハンドルに交換してあります。
関連記事リンク:ABU アンバサダー ロイヤルエキスプレス
スタードラッグは5本、プラス、マイナスがペイントしてある。
それではこいつもメンテナンスのついでに分解してみますか。
ハンドルナット部分の作りはアンバサダーと同様。
アンバサダーはEリングを使っているのにマグサーボはC型のリングで小さなワッシャーを止めてある。
Eリングは精密ドライバーの先端で外し易いのだが、こいつは外し難くてはめ難い・・・紛失注意。
サイドプレートの固定はABUの2000番同様ネジ2本。
関連記事リンク:ABU アンバサダー2500C
遠心ブレーキのブロックが無いのですっきりとしたスプール軸周り。
ドラム状の突起が遠心ブレーキのローター部分。
左サイドプレート内部には深紅に輝くマグネットが収納されています。
左のサイドプレートは小型のネジ5本で固定されています。
調整ダイヤルの裏はこんな感じ。
マグネット部分は中と外に分かれていて、間にスプールのローター部分を収納。
調整ダイヤルで外側のマグネット部分を動かしてブレーキ力を調整しています。
レベルワインドはEリングとワッシャで固定されています。
レベルワインドはリング状のガイドが付属、ラインの抵抗軽減を狙っています。
もっとも穴が小さいので、ABUと比較するとラインを通し難いのですが。
レベルワインドのカバー部分は腐食が・・・この時代は明らかにABUの方がメッキが良いですね。
まあ、私のメンテ不足が最大の要因と思いますが。
現在の最新型と比較すると拍子抜けする程シンプルな内部構造。
マグネットの内側はフレームから外れない。
マグネットの外側。
色分けした小さな円柱状の磁石が幾つも入っています。
メカニカルブレーキの構成はABUと同じ。
全体の作りを見ると、やはりABUの影響を所々に感じられる・・・
シマノのリールは持っていないのだが、この時代のバンタムとの類似点もあるのか?
細かなワッシャーが複数使ってあるのだが、クリアランス調整用のシムとしているように思える部分も・・・?
この辺はもう少しすっきりとした造り込みにして欲しい所。
後は組み立て時にスタードラッグがネジ込み難い。
板スパナが無いと結構面倒。
個人的には心に残るリールが3つあります。
パーミングカップ一体のロープロフィールデザインとキャスティング時にスプール回転とレベルワインドを切り離す機構を装備したスピードスプール。
サムバーシステムを最初に装備したABU5600C。
そして電磁ブレーキ装備のファントム SS-10。
関連記事リンク:ABU アンバサダー5600C
現在のハイスペックリールは、これらのリールが誕生して無ければ、全く違う構造になっていたかも知れない。
SS-10誕生からもうすぐ30年。
最近のリールも確かに年々改良は続いているけれど、一目見て、ウオッ!とかスゲェ!と吃驚するような新製品ってあんまり無いんだよね。
そろそろ全世界が驚愕する、従来のシステムとは全く異なる新機構が搭載されたリールが発売されても良いのじゃないか?
まあ、どんなに素晴らしい製品でも、あんまり高いと買えないので、安くて高性能な物を是非。
ダイワのファントム、マグサーボSS-10です。
今でこそ日本製のハイスペックリールが世界を席巻していますが、私がルアー釣りを始めた70年代、日本製リールは性能、デザイン共に欧米製には全くかないませんでした。
70年代後半になってからスピードスプールが発売されて日本製リールの評価が上がって来る訳ですが、スピードスプールは日本で制作はされていましたが基本設計やコンセプトは共同開発したアメリカのルー社が主導したのではないかと思いますので、厳密にはジャパンオリジナルとは言えないと思います。
70年代末、シマノはスピードスプールの機構を継承したバンタムシリーズをリリース、日本国内の釣り具市場へ進出。
低価格で高性能と言う日本工業製品の優秀さで老舗のABUを追従していました。
同じ頃、ダイワは70年代に製造していたABUのコピーリールから脱却。
シマノのベイトキャスティングリールと同様のコンセプトを持つファントムシリーズで対抗しました。
当時のファントムシリーズですが、私的にはABUのコピー品からシマノのコピー品に変わっただけ・・・と言うのが正直な印象でした。
ルアーにしてもリバーラントのイミテーションのコネリーだとか、オークラのコピーのクルセイダーを販売(クルセイダーは今も売っていますが)していたので、他社の後追いをしている二流企業と言うイメージを持たれてしまっても仕方が無かったのではないでしょうか。
関連記事リンク:へドン ミジェットディジット リバーラント スプーク
関連記事リンク:へドン ディープダイブ リバーラント
関連記事リンク:ダイワ クルセイダー
実際、ファントムシリーズの売り上げはあまりパッとしなかったのではないかと思われます。
ダイワの技術者や経営陣は焦っていたでしょうね。
それまでのダイワの販売戦略は、他社と同じ様な物を安く売ると言うスタンスだった訳です。
しかし、シマノが売れていたのは低価格だけでは無く、デザインや機能が他社(ABU)とは違う革新的な商品だったからです。
どうしたら老舗のABUや新鋭のシマノに並び、あるいは抜き去る画期的な商品が造れるのか?
当時、ベイトリールのバックラッシュ対策はメカニカルブレーキと呼ばれる摩擦式の物と、遠心ブレーキと呼ばれる回転抵抗式の2種類を併用するのが一般的でした。
メカニカルブレーキは釣り場でもダイヤル式のネジを締めたり緩めたりして調整可能です。
一方、遠心ブレーキの調整は、リールを分解して遠心ブレーキのブロックを交換しなければなりません。
交換すると言っても、大きさは2~3種類、数は1個か2個で組み合わせるので細かな微調整は出来ません。
しかも、ブロックは大変小さな上に落下し易いので、釣り場でバックラッシュを解消する為にリールを分解していると大抵無くしてしまいます。
殆どの釣り人は一日中同じブロックの組み合わせで遠心ブレーキを使っていた事と思います。
そんな中でダイワの技術陣は、遠心ブレーキに代わる全く新しい機構を考え出した訳です。
電磁誘導ブレーキの登場です。
釣り用のリールとはどう考えても結び付かない誘導起電力をブレーキに使うと言うアイディアが素晴らしいですね。
その時歴史は動いた!とかプロジェクトX!的な当時としては画期的な発明だった訳ですよ。
結果として、ABUもシマノもダイワの真似をして電磁ブレーキを搭載したリールを発売する事になったのですから。
他社の真似をしていた会社から、真似をされる会社になった訳です。
この発明が無かったら、今でもダイワは2流メーカー、あるいは釣りブームの終焉と共に無くなっていたかも知れません。
当時の価格は1万数千円だったでしょうか?
ABUが4万円近い価格だったはずなので当然大ヒット商品になったと思います。
私も販売と同時に購入しました。
マグサーボの発売が82年だったようですが、私がバイクに乗り始めたのが丁度その頃。
バイクのフロントフォークに購入したばかりのカーボンの2ピースロッドを括り付け、マグサーボを持って奥多摩湖に通っていました。
最近はあんまり使っていませんが、今でも現役。
ボディー左のダイヤルが電磁誘導ブレーキの調整装置。
目盛りは10段階、0がブレーキ力が弱く、10は最大。
ルアー重量によって調整するのですが、私はルアー重量に関係無く大体2で使っています。
肝心のブレーキ性能ですが、個人的にはABUの遠心ブレーキと比較してそんなに大きな違いは感じられませんでした。
元々私はサミング重視のキャスティングで、ABUの遠心ブレーキも最弱状態で使い、メカニカルブレーキにもあまり依存しないので違いが実感できなかったと言う事でしょうか。
左サイドプレートは樹脂製。
寒冷期でも冷たくならないと言うのはメリット。
ABUと同様、メカニカルブレーキも装備。
2-BALL BEARINGS。
この頃からベアリング数を表示し始めたんですね。
ボディーシェイプやクラッチを切るとレベルワインドがスプールから切り離される機構はスピードスプールと同様です。
ハンドルは高級感溢れる?ウッドノブが標準ですが、ABUの4500Cに付いていた大型のダブルハンドルに交換してあります。
関連記事リンク:ABU アンバサダー ロイヤルエキスプレス
スタードラッグは5本、プラス、マイナスがペイントしてある。
それではこいつもメンテナンスのついでに分解してみますか。
ハンドルナット部分の作りはアンバサダーと同様。
アンバサダーはEリングを使っているのにマグサーボはC型のリングで小さなワッシャーを止めてある。
Eリングは精密ドライバーの先端で外し易いのだが、こいつは外し難くてはめ難い・・・紛失注意。
サイドプレートの固定はABUの2000番同様ネジ2本。
関連記事リンク:ABU アンバサダー2500C
遠心ブレーキのブロックが無いのですっきりとしたスプール軸周り。
ドラム状の突起が遠心ブレーキのローター部分。
左サイドプレート内部には深紅に輝くマグネットが収納されています。
左のサイドプレートは小型のネジ5本で固定されています。
調整ダイヤルの裏はこんな感じ。
マグネット部分は中と外に分かれていて、間にスプールのローター部分を収納。
調整ダイヤルで外側のマグネット部分を動かしてブレーキ力を調整しています。
レベルワインドはEリングとワッシャで固定されています。
レベルワインドはリング状のガイドが付属、ラインの抵抗軽減を狙っています。
もっとも穴が小さいので、ABUと比較するとラインを通し難いのですが。
レベルワインドのカバー部分は腐食が・・・この時代は明らかにABUの方がメッキが良いですね。
まあ、私のメンテ不足が最大の要因と思いますが。
現在の最新型と比較すると拍子抜けする程シンプルな内部構造。
マグネットの内側はフレームから外れない。
マグネットの外側。
色分けした小さな円柱状の磁石が幾つも入っています。
メカニカルブレーキの構成はABUと同じ。
全体の作りを見ると、やはりABUの影響を所々に感じられる・・・
シマノのリールは持っていないのだが、この時代のバンタムとの類似点もあるのか?
細かなワッシャーが複数使ってあるのだが、クリアランス調整用のシムとしているように思える部分も・・・?
この辺はもう少しすっきりとした造り込みにして欲しい所。
後は組み立て時にスタードラッグがネジ込み難い。
板スパナが無いと結構面倒。
個人的には心に残るリールが3つあります。
パーミングカップ一体のロープロフィールデザインとキャスティング時にスプール回転とレベルワインドを切り離す機構を装備したスピードスプール。
サムバーシステムを最初に装備したABU5600C。
そして電磁ブレーキ装備のファントム SS-10。
関連記事リンク:ABU アンバサダー5600C
現在のハイスペックリールは、これらのリールが誕生して無ければ、全く違う構造になっていたかも知れない。
SS-10誕生からもうすぐ30年。
最近のリールも確かに年々改良は続いているけれど、一目見て、ウオッ!とかスゲェ!と吃驚するような新製品ってあんまり無いんだよね。
そろそろ全世界が驚愕する、従来のシステムとは全く異なる新機構が搭載されたリールが発売されても良いのじゃないか?
まあ、どんなに素晴らしい製品でも、あんまり高いと買えないので、安くて高性能な物を是非。
Posted by KAZU@ at 10:10│Comments(4)
│釣:リール
この記事へのコメント
私もマグサーボss10、発売と同時に買いました。定価15000円の2割引きで12000円で購入した記憶があります。それまでのアブ5500cよりかなり軽く、軽いルアーも得意でした。
Posted by 123 at 2020年11月24日 07:58
123さん、こんにちは。
当時の定価は15000円でしたか。
ここ10年位バス釣りをしていないので、最近ベイトリールはカルカッタBFSしか使っていないので、マグサーボはクローゼットの奥で眠っています。
いずれメンテナンスして、再びバス釣りに使ってみたい・・・と、思っているのですが、同じような使っていないリールが幾つもあるので果たして何時になるやら?
コメントを頂き、有難う御座いました。
当時の定価は15000円でしたか。
ここ10年位バス釣りをしていないので、最近ベイトリールはカルカッタBFSしか使っていないので、マグサーボはクローゼットの奥で眠っています。
いずれメンテナンスして、再びバス釣りに使ってみたい・・・と、思っているのですが、同じような使っていないリールが幾つもあるので果たして何時になるやら?
コメントを頂き、有難う御座いました。
Posted by KAZU@ at 2020年11月24日 20:46
私もSS10、発売と同時に買いました。定価の2割引の12000円で、甲府のなとり釣具で購入しました。月刊フィッシング内の広告に、2gのミノーをフルキャスト、という謳い文句に、ノックアウトされました。2gのミノーはさすがに厳しかったですが、それまで使用していた5500Cや、ミリオネア5000より軽いルアーが遠くまで飛びました。本当に画期的なリールでしたね。ただ、デザインはシマノのバンタムシリーズの方が美しく、友人達はシマノマグキャストを買ってました。
Posted by KT at 2021年08月28日 09:19
KTさん、こんにちは。
今でこそ、軽量ルアーを投げられるリールは沢山ありますが、40年前には画期的なリールでしたね。
流石に現在使う事はありませんが、時々取り出して眺めています。
コメントを頂き、有難う御座いました。
今でこそ、軽量ルアーを投げられるリールは沢山ありますが、40年前には画期的なリールでしたね。
流石に現在使う事はありませんが、時々取り出して眺めています。
コメントを頂き、有難う御座いました。
Posted by KAZU@ at 2021年08月28日 11:53
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